【「都市(まち)づくり教育」に挑戦する貴方へのエール!】
☆2000年2月9日(水)産経新聞静岡版”学びと教えの現場から”掲載 |
自分の住むまちが教室
デジタルカメラやメモ用紙片手に「未来の町」を実地学習
授業の場所は、自分たちが住むまちです。 教室ではありません。
人にやさしいまちづくり探検を小学三年生が行いました。子供たちは、デジタルカメラやインスタントカメラ、カセットテープレコーダーにメモ用紙を持っています。
「市役所探検隊」「中央図書館探検隊」「点字ブロック探検隊」「バス停探検隊」「地下道探検隊」「オムニバス探検隊」が学区内のまちの様子を調べました。
そこで子供たちは、何を調べてきたと思いますか。
点字ブロック探検隊は、点字ブロック上に無造作に駐車してある車を発見しました。子供たちは、すぐにそれをデジタルカメラにおさめました。ノートを取り出し、その場で書き留めている子もいます。
地下道探検隊に参加したM子は、次のような作文を書きました。
『わたしは、地下道探検 隊をやって、目の不自由 な人の気持ちが少し分かりました。 目をつぶって階段を上りました。特にこわかったのが下りるときです。 なぜなら少し前に乗り出すと,転んでしまうからです。 また探検をやるなら、地下道探検隊に入って、いろいろなことを知りたいです。 とても楽しかった。またやりたいです。』 (注−最後の二行は点字で書かれていた)
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M子は、実際に目の不自由な人の立場に立って階段の上り下りの体験をしていたのです。
保護者からは、次のような手紙が届きました。
『先日はデジカメを撮ったと話してくれました。 町へ出て、みんなにやさしい町かどうかインタ ビューもしたと言っていました。点字ブロックの ことも話してくれました。 十一日の日曜日も、仕 事が早く終わったので、一緒に町中へ散歩に行きました。 その時も、この階段は身体の不自由な人やお年寄りにはやさしくできているか、点字ブロックもこれで分かりやすいか、スロープの手すりは持ちにくくないか…とか地下道の点字の案内板も読んでみたりと社会科で学習していることを身近に感じているようです。』 |
家庭へも波及している様子が伺われます。
この後、「わたしたちのまちは人にやさしいまちになっているか発表会」を行いました。まちの「やさしい」部分と問題点を劇やクイズさどにして発表したのです。中には,パネルやパソコンを使って説明するグループもありました。
最後に、「わたしたちの未来のまちづくり」プランを考えました。例えば−
・道が動くまち
・体の不自由な人でも安 心できるまち
・お花畑のまち
・お年寄り遊園地のまち
・動物と仲良くできるまち…等イラスト入りのプランが作られました。
学校では、従来の教科学習以外に環境、福祉、情報、国際理解に関する学習を積極的に推進しています。
当然、学習対象は、学校外が多くなってきます。
先ほどの探検をした子供たちは次のように私に報告に来ました。
「町の人たちへのインタビューの後、 どの人も『頑張ってね』『いいことやってるね』『これからもしっかりね』と声を掛けてくれる。これがとってもうれしいんだ。」
私は、何だか心がじいんと温かくなってくるのを感じずにはいられませんでした。
小学生の子供たちが、人にやさしいまちづくりへ参画し始めました。九歳の子供が未来のまちづくりに心を馳せているのです。
こんな「まちづくり教育」には夢があります。